2006年に公開された劇場用アニメ。DVDレンタル。
今より少し未来。ある一人の天才によって画期的な機器が生み出された。
それは人の見てる夢を映像化することのできる機器であり、
その機器を使っている人同士で夢を共有することのできる機器だった。
そしてこの技術によって精神医療は大きな進歩を遂げるであろうと思えた。
千葉敦子は研究所に所属するセラピストとして機器の開発に従事しながら
影ではパプリカとなって機器を使ったクライアントの治療を行っていた。
そんなある日、開発中の機器「DCミニ」が盗まれる事件が発生した。
しかも盗まれた「DCミニ」はあくまで研究室レベルの未完成品であり、
機器を使用してる他者からのアクセスを遮断する機能が無かったのだ。
つまり悪意を持って使用すれば他人の夢を侵食することが可能なのだった。
この事態に至りかねてより研究を快く思ってなかった理事長が中止を迫る。
その席上、突如として島所長は意味不明な演説をしながら窓へと走り出した。
辛うじて助かった島所長だが、奇妙な夢に囚われて眠りつづけるのだった。
そう、既に事態は想像よりも遥かに深刻だったのである。
まず見て最初に思ったこと。これなんて妄想代理人?(笑)
両方とも見たことがある人なら言ってる意味わかるでしょ?
見た目から雰囲気から構成から仕掛けまでそっくりそのままです。
(コアスタッフが妄想代理人とほとんど同じだったりする)
クライマックスに妄想が現実に染み出すとこなんて全く同じだよ。
こっちは原作が付いてるというのにここまで似てるのが逆に不思議。
それもそのはず今敏さんは原作の筒井康隆さんの大ファンだそうで。
生み出す作品が全く影響を受けてないと考える方が難しいだろうよ。
考えてみたら欲情とか狂気を匂わせてるし次第に収拾がつかなくなるし
さりげなく残酷なあたり筒井康隆さんの作品に通ずるものがあるかな。
(一作目の映画でいきなりレイプを扱ってるし)
夢(妄想・虚構)と現実という題材もかなり普遍的なテーマでありながら
エンターテイメントに調理するのが難しくて挑戦のしがいがある。
物語を概念から組み立てる人なら一度は挑戦しようと思うほどに。
アニメでもビューティフルドリーマーと言う有名な作品があるし。
去年大ムーブメントになった涼宮ハルヒの憂鬱も近い題材なわけで。
(そーいう意味ではハルヒとらき☆すたは全く別の次元の作品です)
そして今敏さんは今まで何度も仕掛けを変えながら挑戦してたのでした。
前の映画の東京ゴッドファーザーズだけはちょっと毛色が違ったけど。
東京ゴッドファーザーズで一つ書くことを思い出した。
これは最近の大作アニメにありがちな「豪華キャスト」を使ってない。
この場合の豪華とはベテランの声優を並べたって意味ではなく
有名な俳優だけど声優の演技はちょっと微妙な顔ぶれってことです(爆)。
実は最初これもよくある豪華キャストかと身構えて見始めたんだけど、
パプリカも時田も超有名な声優さんの声にそっくりでアレレ?とか思った。
もちろんクレジットを見たらそっくりどころか当人だったんですが(笑)。
てゆーかベテラン&超有名な顔ぶれの本当の意味で「豪華キャスト」です。
肝心の作品の話。
夢と現実を描くのに夢を共有する機械という仕掛けを用いたのは面白いね。
テクノロジーで感覚的なものにリアリティを持たせるのは常套手段だけど、
どんな仕掛けでも説得力を持たせられるかと言うとそうではないから。
そーいう意味でコレは将来実現するかもと思えるほどの説得力があります。
(原作に比べて説明を大幅に端折って感覚的な説得力を追求したらしいけど)
今までの今敏さんの作品は仕掛けに理論的な裏づけが希薄だったので、
途中までは凄く良いのに最後にアレレ?になっちゃうことが多かった。
今回は原作がついてるとはいえちゃんと収拾がついてるのがいい点すね。
(筒井康隆さんも暴走してたまま終わっちゃう作品をよく書きます)
この作品は妄想代理人に似てるのでそれのリベンジって感じすらするよ。
この作品で特筆すべきポイントがもうひとつ。
それはまさに総天然ショックとでも言いたくなる夢の映像の表現です。
※総天然ショック→総天然色をもじった何かの広告コピー
特に付物神の大名行列のような百鬼夜行のような映像は凄いインパクトが。
現実を緻密で現実的な映像として描いてるから落差がインパクトになる。
もちろん夢が全てうそ臭い大胆な映像と言うわけではないのがポイント。
夢なのに現実のように見える部分もあるからその境界は曖昧になる。
と言うか最初の視聴でどこまでが夢かは見極めるのは難しいと思う。
物語構成としてあえて誤認させるようなフェイクを使ってるからね。
こーいう作品を見るとやっぱ日本のアニメって凄い!と思えます。
一般ウケはあまりしなそうだが。