今年公開された劇場用アニメ。DVDレンタル。
原作は小説で読んだことはありません。
主人公のワタル(三谷亘)は現実の世界に生きるごく普通の小学生(11歳)。
ワタルは友人たちと噂の幽霊ビルを探検していて不思議な光景を見る。
工事中で途中で終わってる階段の先が空に浮かぶ大きな扉まで続いてた。
扉の向こうに行けば運命を変えられる。何でも一つだけ願いが叶う。
不思議な少年はそう言って、階段を上りその中へと消えていった。
ごく普通の少年のワタルにとってその扉は現実ではないハズだった。
しかし変わりなく続くはずだった
ワタルの現実は突然に崩壊する。
家族を捨てて出て行った父親。不注意の事故で病院に運ばれる母親。
ワタルは目の前の現実から逃げ藁にでもすがるように扉を開いた。
見るからに凄くキレイな映像です。現実のパートは緻密で解像度高いし。
GONZOお得意のCGも結構使ってるけど、手描きでも動かしまくりだし。
製作費いったいいくらかけて作ったんだ?などと下世話な感想を。
お馴染み豪華キャストと言うギャラだけ高い面々も揃えてるしな(皮肉)。
別に俳優やタレントを全く使うなとは言わんけど……
ひと昔前のアニメ映画でこんなに予算かけてるのそう無かったのに。
宮崎アニメと他はそれなりに実績のある人の数作だけだったハズ。
(劇場版AIRなんかこれの1/10も製作費かかってないかも)
でそれに匹敵するほど客を呼べる作品には見えないんですが。これ。
こんな無茶ばかりやってるからGONZOは赤字になるんだよ。
作品の印象はハリウッドのファンタジー・エンターティメント映画っぽい。
それなりのテーマとそこそこのストーリーを派手な映像で見せるって意味で。
ハリーポッターあたりの凄い金をかけた児童文学作品と体裁が近いっすね。
いきなり装備を与えられて宝玉を5つ集めろとかRPGみたいでもあるけど(笑)。
クライマックスは派手に盛り上がるし、わりと泣きっぽいシーンもあるしで、
(あまりに狙いすぎなシーンなので涙の代わりに薄笑いが……)
そこそこ満足できる作品ではあります。でも
あまり後には残らないかな。
内容について。
見てて凄く気になったんだけど、この
作品の設定には致命的な矛盾がある。
それは「闇の宝玉」を取ると魔が放たれて世界が滅んでしまうってとこ。
でも旅人が願いを叶えるためには「闇の宝玉」を取らなければならない。
ビジョンという世界の安寧を選ぶか、自分の願いを選ぶかの二者択一。
このビジョンが言葉どおりの仮想世界であくまで試練であるなら、
全てを犠牲にしてでも自分の願いを選ぶのが正解という可能性もある。
だけど現実とは別に存在してる異世界なら滅ぼしてしまうのはまずい。
実際にワタルは最後に自分の願いよりもビジョンの未来を選んだし。
でも考えてみたら過去の旅人が願いを叶えても世界が滅んでたわけで。
(ワタルが魔を消したので今後は大丈夫だろうけど)
旅人というのはビジョンでは認知されてる以上過去にも結構いたはずで。
それなのに過去に一人も宝玉を集めきれた人がいないのも考えにくい。
願いを叶える度にビジョンがリセットされるなら別だけど……
それだとまさに試練のために仮想世界で未来を願ってやる義理はない。
世界の未来を願うのがビジョンを旅する試練の答えとしては正解で、
それを選べばワタルの(真の)願いも叶うのも有りだと思うけど。
この作品世界はそーいう仕掛けにはなってないし。
最後にミツルの妹が出てきた時には「は?」とか思ったよ。
確かにワタルはビジョンを旅したことで多少なりと成長した。
願いを叶えるために何をしてもいいわけじゃないと気づいたし。
そーいう意味で見せたいテーマはきっちり描けてるとは思う。
わりと記号的な試練の積み重ねというのも構成としては妥当でしょう。
しかし物語の重要な構成に矛盾があると
でっち上げ感が漂ってしまう。
フィクションはでっち上げ感や作りもの感をいかに消すかが肝なのに。
にしても脚本が素晴らしいって、本気で言ってる?
※公式サイトの一番上の(宣伝用の)各誌の映画評の話
実は「闇の宝玉」の設定が出てきたとき、オチはどーするの?と思った。
そして後の展開の可能性で最も面白みのないのがこの作品の構成だったり。
クライマックスで謎の少女が出てきたときに、
実はこの少女こそが女神で、
自分を殺して全てを叶えればいいと囁くのが最後の試練かと思ったのに。
いやこれも試練の一つなんだけど、表面的には化け物を撃退しただけだし。
てゆーかわざわざ姿が化け物に変化したのはかなり興ざめだったり……
できれば終盤に想像を越える驚くような仕掛けを期待してたんだけど。
「GONZOアニメは脚本が今ひとつ」の証明をするような映画だなと。