※セル・レンタルDVDのリリースは4/26から
この作品って主人公とその彼女と鬼軍曹(本郷三佐)以外の人たちは
イマイチ見分け難いと言うか名前と顔が一致しないというか……(汗)
もちろんそれぞれにエピソード毎に印象に残る人がいるのは確かだけど
エピソードを越えて同一人物として認識するのがなかなか難しかったり。
それは外見や行動にわざとらしいキャラ付けをしてないせいだけど。
むしろエピソード毎のゲストキャラの方が見分けやすいほどだし。
そのへんのキャラの描きかたを見ててふと思ったのです。
この作品ってもしかしてプロジェクトχのような
どこにでもいる(呼び名はあるけど)無名の人たちの物語なのかなと。
特別なヒーローではなく、スペシャリストには違いはないけど、
与えられた仕事をきっちりとこなしている普通の人の物語というか。
いつもの仕事でもエピソードによって光が当たる瞬間が有るというか。
キャラの濃さで視聴者を引きつけるのとは対極にある作品って感じすね。
アニメは絵なのでキャラにハッキリとした特徴をつけやすいけど
考えてみたらあえてキャラの特徴を薄くすることもできるわけで。
実写っぽい映像だけど実写ドラマでここまでキャラを薄くするのは
無名の役者を並べるのが現実的でない以上難しいかもしれないね。
演技力はともかく(おいおい)役者やタレントの人はオーラが強いから
よく知らない人でも見てるうちに識別できるようになっちゃうし。
※そーゆー人が役者やタレントになるんです
もうひとつこの作品の特徴としてはディティール描写の細かさがあります。
例えば5話でめぐみ(彼女)が営業で書店を廻ってる時に棚を観察して
痛んでる&日に焼けてる本のカバーを取り替えてるシーンを描いてる。
これ書店や出版の営業の人には常識だけど普通の人は知らんでしょ?
(本好きで書店に通ってる人なら知ってるかな)
こーゆー(知られてないけど)当たり前のことを丁寧に描写することで
現実を描いた作品では作品世界の説得力が全然違ってくるわけで。
この作品が面白い理由のひとつはここに限らない丁寧な描写に有るのです。
丁寧な描写で印象に残ったもう一つ。
救難の人たちは自分の機体がなくて愛機という感覚はないが
整備の人たちは担当する機体があってむしろその人にとって愛機かもと。
それぞれの機体整備の責任者を機付長(きづきちょう)と呼ぶとか。
この程度までなら他のデキの良いアニメでも描く機会はあるでしょう。
そして強く印象に残ったのはその先を描いた部分なのでした。
航空救難団は元々が航空自衛隊の事故に対応するために組織されたもので
(一般の目に触れる)災害救助は副次的に生まれたものだった。
6~7話では同じ小松基地の戦闘機が行方不明になり捜索を行うことになる。
このエピソードでその機体の整備した人たちの表情がクローズアップされる。
もし行方不明の原因が機体の整備不良だったら悔やみきれないという感じで。
ある基地では事故の後に首を吊った機付長もいたなんて話もしたりして。
メカニックの人が目立つ作品は今までにいくつも見てきたけど、
こんな描かれ方をした作品は初めてだったのでとても印象的だったよ。
このエピソードに関しては他にも書きたいことが山ほどあったけど
書き始めたらネタバレしまくりになりそうなので自粛して一つだけ。
「生きてる」と確かめるように繰り返すセリフが胸に突き刺さって
すっかり涙がダーダーな状態でした。つーか思い出すだけで涙が……(汗)
8~9話では主人公が偶然乗り合わせたロープウェイで事故が発生。
ロープを噛んでる箇所が外れかかった危険な状態で空中に停止してしまう。
このエピソードでは縦割り行政の縄張り争いみたいな一面も垣間見えたり。
それと自衛隊は実質的には軍隊なのでシビリアンコントロールの原則から
たとえ災害派遣だとしても自己判断で出動することはできないという現実が。
※阪神淡路の時は行政が機能不全に陥って自衛隊に要請が出せなかった
メンツの張り合いで救難隊を呼ばず、消防が救助を試みるけど無理で。
このまま待ってたら落下の危険があるので主人公は決断するのです。
備え付けの非常脱出設備を使って乗客を地上まで下すことを。
この時の主人公の姿はとっても頼もしくて憧れてしまったよ(笑)。
実際この状況に陥った時に救難隊の人がいたら地獄に仏だろうし。
もしももっと若かったらこの仕事を志したかもしれないとか思った。
アニメを見ててそんなことを思ったのはもしかしたら初めてかも。
この自力での降下作業は残念ながら事態の悪化によって完遂はしないけど
最後の最後に救難隊のヘリが登場してフィナーレを飾ってくれるのでした。
この救助のしかたが想像してたのより大掛かりな方法でビックリしたり。
さすがに金の掛けかたが半端じゃない自衛隊ならではの手法だなと。
ここに限らないけどこの作品は淡々としててあまり派手さはないけど、
事故に直面したギリギリと締めつけるような苦しさの連続の果てに
ドカーンと突き抜ける開放感があって、そこがカタルシスになってる。
物語的なメリハリは極力押さえた現実の延長のような構成だけど
それでもエピソードの最後には感情が溢れてくる。これは凄いことだなと。
そんな感じで素晴らしいこの作品ですが
あと3話で放送はお終いです(放送自体はさっき終わった)。