10月からTBS系全国ネットで日曜日の夕方に放送してる新番組。
各バンダイチャンネル・GyaO!で最新話無料配信中。
※レンタルDVDはセルBD/DVDと同時にリリース(1巻はリリース済)
南方にある緑豊かな島、南十字島。
ある日、この島にツナシタクトという少年が海を泳いでやってきた。
島にある南十字学園高等部に入学するためにやってきたのだという。
(ちゃんと本土と行き交う連絡船があります)
青春を謳歌するためにここへ来たと明るく言い放ったタクトの姿に
浜でタクトを助け知り合ったワコやスガタは好感を抱くのだった。
それは逃れられない宿命を打ち破る何かを期待したからかもしれない。
そうこの島にはタクトの知らない大きな秘密と策謀が有ったのである。
タクトにも自身すら知らない
この島に関わる宿命が有ったのである。
そして役者は揃い物語の歯車が回り始めた。
おそらく1話を見た人の大半は私と同じ感想を抱くと思われます。
「口あんぐり」という。何しろ颯爽登場、銀河美少年!だからね(爆)。
変な仮面をつけた妙な人たちがポーズつけて「綺羅星★」とかやるし。
不思議な異空間を発生させるし、ロボット!?も有機的なフォルムだし。
無駄にカッコイイしリアルっぽいけど妙にコメディタッチでもあるし。
いわゆる学園ロボットアニメという形容からイメージするものとは
あまりにかけ離れた、
予想外に突き抜けたトンデモ作品だったのです。
1話を確認のために見たときの印象は「なんじゃコレ?」だったですよ。
面白そうではあるんだけどどう判断していいかわからないって感じで。
悪ノリしまくりでリアルからかけ離れてるように思えるこの作品。
それでも一応ちゃんと舞台設定やキャラ設定はなされてるのでした。
皆水(みなみ)の巫女であるワコや、王の力を受け継いだスガタとか、
重い運命を背負いながら日常はそれを感じさせない態度をとるとか。
サイバディとかも古代のオーバーテクノロジーみたいな設定だし。
綺羅星十字団の人たちも一枚岩ではなくそれぞれ別に思惑があるし。
確かにかっ飛んでるし色んな意味で凄くて唖然とすることも多いけど
物語の土台になる部分は一本筋が通ってて決してデタラメでないのです。
芸風の向うに物語が見えてくることで次第に共感できるようになるし、
キャラに共感し物語を追うようになるとこの
芸風がクセになってくる。
おかげで8話ぐらいで終わりにするはずが全部見てしまったよ……
不思議な感覚の作品を作ったもんだと、まとめて見ながら思いました。
この作品を男版の(少女革命)ウテナだみたいに言う人もいるらしい。
確かにそう言える部分もそれなりにあるし、そうではないとも言える。
毎回のようにタクトがサイバディー(ロボット!?)に乗って戦うけど、
その戦いがまるで
舞台で戦いを演じてるように抽象的・記号的なのです。
戦う場所もゼロ時間という時のない現実から切り離された異空間だし。
颯爽登場、銀河美少年!とか動きがわざとらしくまるで演劇みたいだし。
タクトの乗るタウバーンなんて頭の上に羽飾りみたいのがついてるし、
両手に光る剣みたいのを持っててまるで中世の騎士みたいなので。
そもそもこの作品におけるロボットバトルって主じゃないんだよね。
よくある対立する国があって道具としてのロボットが戦う作品ではなく、
サイバディーという超常の力がありそれを巡る様々な人間模様がある。
その人間模様の一つの発露としてロボット同士が戦ってるに過ぎない。
一見すると対立勢力が戦ってるようだけどそう単純な図式でもない。
それぞれの人の心のうちや思惑を日常の生活と戦いの中で描いてる。
平和とか正義とかではなく
極めて個人的な想いで行動してるのです。
戦いが極めて記号的でエゴで突き詰めた内容なのは確かにウテナっぽい。
芸風がかっ飛んでるのもウテナと手法が似てるとは言えるかも。
ただ表現的にはそれほど前衛的ではないです。むしろ現実的なので。
同じ五十嵐監督のホスト部の方が表現的にはウテナっぽかったなと。
内容がかっ飛んでるので表現はリアル路線にしたのかもしれないね。
リアル路線のクセにポップなコメディ表現を結構交えたりしてるし。
だからと言って決して安っぽくはならないようにバランスとってるし。
表現や作品世界の作りこみの
完成度の高さはさすがという感じです。
佐藤順一さん系統ではおそらく今一番実力がある人じゃなかろうか。
(つまりウテナの直系の人です)
あと男版ウテナの男版って言い回しにはちょっと引っ掛かったかも。
確かに主人公はタクトだし、全編で活躍してるし、カッコイイけど、
思ってたよりこの作品って男キャラの占有率が高くなかったりして。
むしろタクト以外だと
女キャラの方がずっと目立ってるよね、コレ。
主人公が男になった舞-HiMEみたいだし(内容は全く似てないけど)。
1話を見たときはてっきり男キャラメインの作品だと思ってたのに……
まぁ、面白いならどっちでもいいけどさ。
この作品のターゲットっていったい誰?とか見てて思ったですよ。
この物語の大きな流れとしては。
地下の遺跡のサイバディーを現実へ出そうとする綺羅星十字団がいて、
サイバディーを表に出す
障害となる4つの結界を破っていくわけです。
4つの結界とは血と力を受け継いだ4人の巫女による東西南北にある結界。
1話でいきなり気多(きた)の巫女の封印が破られて次の段階に進むのです。
当然ながら他の巫女の身にも綺羅星十字団の魔の手は迫りくるわけで。
主人公のタクトが島に来る時に溺れてそれを助けたのがワコなんだけど
このワコが皆水(みなみ)の巫女という
仕組まれたような巡り合わせで。
ワコを守るために綺羅星十字団の前に立ちはだかるという展開になる。
命を助けてくれた気になる(好きな!?)女の子のために戦うわけです。
正義とかそんなものではなく極めて個人的な理由で戦ってるわけです。
むしろ力をしかるべき形で管理しようとしたカナコが一番正義だよなと。
(綺羅星十字団の人たちはそれぞれ別々の思惑で集まっている)
表の顔があまりに自由奔放すぎて一見するとバカみたいに見えるけど。
綺羅星十字団の大いなる目的の前に銀河美少年が立ちはだかったので
メンバーがそれぞれの思惑でタクトの排除をしようと画策するのです。
その過程でそれぞれの事情や思惑といった人間模様が描かれるのです。
全体として大きな流れがあるけど1話1話はほぼこの構成になってます。
この一つ一つのエピソードとそこで描かれる人間が面白いのです。
個別のエピソードで特に印象的だったのは
人妻高校生のカナコとその使用人のシモーヌのエピソードですかね。
※使用人も同級生で同じ学校に通ってたりする
普段は使用人として主人を立てて静かに従ってるように装ってるけど
時おりどうにかして地位を引っくり返せないかと
牙を覗かせてたり。
直接は誰にも言わないけど心の中で「この女は嫌いだ」と言ってたり。
シモーヌにはそう思わせるだけの複雑な事情があったりするのだけど。
対するカナコはというとネタバレなんで詳しいことは書かないけど。
全て明かした後「そんなシチュエーションが素敵」とか言ってたよ。
(それを聞いたシモーヌは「やっぱりこの女は嫌いだ」でした)
シモーヌが戦おうとした時にカナコがひどく動揺してたのを見て、
理由はわからないけどシモーヌを凄く大事にしてるんだなとは思った。
上にもちらっと書いたけどカナコはこの
作中で一番良識的な人なので。
シモーヌのほうはその態度に全く違った解釈をしたのが面白かったね。
シモーヌも嫌い嫌いと言ってるわりにカナコのことを考えてたりするし。
二人はとても面白い関係だなと。
個々の事情を描きつつ物語は次第に進んでいき大きな転機を迎えます。
8話あたりと16話あたりにそれぞれ物語の大きな山場を迎えます。
全体を3分割してそのクライマックスに山場を設定してる感じだろうか?
8話までが気多の巫女(さかなちゃん)が檻の中で物語を語るパートです。
最初は囚われの少女みたいに思ってたけど何か自分で望んだ感じだね。
檻と言っても鍵は掛かってなくて、鎖に繋がれてたわけでも無かった。
さかなちゃん(本名は不明)は自ら望んで檻に閉じ込められていたのです。
ってことは気多の封印を破るのも本人の了承でやった可能性があるね。
一見するとそう見えたことが必ずしも真実を示してないってことか。
この第一部のクライマックスにあたる8話あたりに
スガタやワコに受け継がれた力とその過酷な運命みたいな話が語られます。
少しずつ見え隠れしてた設定を衝撃的な形で実感することになるのです。
なぜワコがあそこまでスガタが王の力を使わせるのを止めてたのかを。
いつもは明るく振舞ってて気付けなかった二人に課せられた過酷な運命を。
いつもはクンづけのスガタを呼び捨てで叫ぶワコの姿にズキっと来たよ。
確かにあんなシーンを見たら
実は二人と一人だったとか思ってしまう。
タクトはワコに気があったわけだし。
9話からの第二部ではミズノとマリノという双子の姉妹が中心になります。
この二人のうち妹の方が日死(にし)の巫女だけどそれを隠してるのです。
そして姉は妹の正体を隠して守るために綺羅星十字団に入ってるのです。
理由はわかるけど綺羅星十字団の中での仮面キャラはちょっと凄かった。
現実での姿が穏やかで良識的で面倒見がいいお姉さんキャラなもんで。
(みんな現実と仮面キャラには多少のギャップが有るけど)
そーまでして妹に執着して大切に思う理由はわかるような気もするけど、
違和感と言うかちょっと執着しすぎのような気も多少はしたんだよね。
この違和感こそが核心だったのだけど……
16話あたりにミズノとマリノのパートのクライマックスが来るんだけど
このクライマックスも衝撃的だった。それまでの中で最も衝撃的だった。
まさかそーいう設定だったとは……
だから姉があそこまで妹に執着して妹をひたすら守ろうとしたんだなと。
××が望んだからそこにいて、××の信頼が揺らいだからいなくなった。
力で生まれたなら封印が破られた時点で存続できなくても不思議はない。
理屈を突き詰めるなら救いの無いその結末の方が筋が通ってたりする。
でも筋が通らなくても、救いがあるあの結末の方がずっと好きだなと。
(印を持ってると力は消えないと言う説明が18話にありました)
15話で島を出ようとしたあたりから主観視点で衝撃の連続だったので
最後のシーンは××に
ものすごく共感してしまったよ。