4月からTBS系(5局)とBS11で深夜に放送してる新番組。
Key所属のエロゲーのカリスマによる原案脚本のアニメオリジナル作品。
キャラデザ原案及び主題歌・サウンドドラックもKeyが担当してます。
※セルDVD/BD・レンタルDVDは6/23からリリース
主人公の少年・音無(おとなし)は気付いたら現実に酷似したそこにいた。
目覚めた時には記憶を全て失ってて近くには変なことを口走る女がいた。
ゆりという女は、お前は死んだのだとか、あの少女は天使だなどと言う。
そして、ただの少女にしか見えない天使とやらに銃口を向けるのだった。
ゆりの電波話が理解できない音無はその場を去って少女の元へと向かう。
ゆりの話の意味不明さの同意を少女に期待して誇張した言葉を口にする。
次の瞬間、天使と呼ばれてた少女は手を鋭い剣に変え音無を突き刺した。
この作品で描かれてる世界は恐らく想いを残して死んだ魂が行く場所で、
安らかな日々の中で死を受け入れて転生するための場所なのでしょう。
つまりこの世界から消えるというのはむしろ正しいプロセスなわけです。
ゆりに敵認定されてる天使は傷ついた魂を癒して転生に導いてるのです。
だからこそ「天使」という露骨すぎるネーミングがされてるわけです。
天使の行為が正しくてゆり達が間違っている、というわけでもないけど。
強い心残りがあるから簡単に全てを忘れて転生なんかしたくないわけで。
ゆり達は死を受け入れられなくて現世に留まる自縛霊みたいな感じかも。
つまりは、よくある心霊ハートフルホラーな作品と言えないこともない。
それがどうするとここまでエキセントリックになるのか不思議だよ(笑)。
似たような仕掛けの作品に灰羽連盟という知る人ぞ知る傑作があって、
その作品はとても観念的な世界観の中でストーリーが展開していきます。
そんな作品より現実っぽいこれの方がずっとエキセットリックなわけで。
キャラの変人っぷりといいなんとも独創的なセンスを持ってると思った。
変なノリとシリアス要素を強引に繋ぐ手法はCLANNADとそっくりっすね。
これは脚本も自分でやってるから色がより濃く出てると言えるかも!?
最初からアニメ用に考えた作品なので構成はずいぶんマシな感じだね。
キャラが変なのは(脚本もやってる)原作者の芸風みたいな感じだけど、
この作品では無意識になってるのではなく自覚的に敢えてやってる感じ。
生々しいキャラでそれっぽくならないなら逆方向に暴走してみようとか。
(この人やなのはの人の生っぽいキャラも見てみたい気もするが)
そもそもメインヒロインのゆりからして多くがある印象を抱くだろうよ。
いきなり電波な話を捲くし立てるし、妙な団体名だし略したらSSSだし、
ストレートロングの髪にカチューシャをしてる狙ったような外見だし、
第一印象で「涼宮ハルヒの妄想」とかタイトルをつけたくなったよ(笑)。
戦線の目的だってバカ騒ぎをしてこの世界での生活を楽しむことだから、
(行動の理由は違えども)ハルヒのやってたことと全くと同じわけです。
野球やってみたり、ガールズバンドだったり、釣りキチ三平だったり、
偶然と思えないようなネタが並んでるあたり、狙ってるんだろうなと。
いつもより男キャラが多くて男同士で絡むことが多いのも狙ってる!?
この作品は毎回仰々しいタイトルだけど実態はアホな作戦を実行します。
上にもあるように馬鹿騒ぎをしてこの世界を楽しむことが目的なので。
そして恐らくはルールを破ることが消えないために必要なのでしょう。
結果的にルールを守らせようとする天使と戦いになることは有るけど。
命がけの戦いをするような展開にはなりません。そもそも死なないので。
そんな茶番劇に近いバカ騒ぎにそれぞれの生前の話が挿入されるのです。
死を受け入れられないほど強い悔いの残る生前の重苦しいエピソードが。
この世界でのバカ騒ぎと重苦しい記憶との明暗コントラストが凄いです。
でもゆりの生前の悔いがバカ騒ぎを起こしてるのだから必然ではある。
必然性があるから極端な二面性があっても作品が空中分解しないのです。
キャラが変でもノリが変でもちゃんと楽しめる作品になるんだなと。
それぞれの話はただの泣き要素として挿入してるわけではありません。
生前の強い悔いこそがその人をこの世界に縛り付けてる理由なわけで。
ゆり達が「死んだ世界戦線」という自縛霊を続けてる理由なわけです。
本人が自覚するしないに限らず思いを果たすために行動してるのです。
そしてもしこの世界で果たせなかった願いを叶えることができたなら、
それは死を受け入れ転生する(この世界から消える)ことになるのです。
ゆりが神と呼ぶこの世界の理に抵抗するためにやってるバカ騒ぎが
誰かの生前に思い残した願いを偶然に叶えてしまうこともあるのです。
物語はゆり達「死んだ世界戦線」と天使が対峙する構図で始まります。
魂を転生へ誘うのが天使の目的だし、秩序を守る委員長の役割もあり、
消えないためにバカ騒ぎを続けるゆり達と対立するのは当然なわけで。
天使がいたいけな見た目とは裏腹に強い力を持ってたせいもあるけど。
でも生前の記憶がない音無にとっては天使が敵とは思えなかった。
そもそも天使は理を守る側で反抗しなければ何もしてこないわけで。
音無はできることなら天使……奏と仲良くしたいと思ってたのです。
出会いのきっかけが違えば奏の味方だったかもしれないと思ったのです。
もしもそうなってたらとっくにこの世界から消えていたわけだけど。
あまりにもこの世界のシステムは奏にとって理不尽だと考えるのです。
だから役割を失い戦う理由も失った奏を仲間に引き入れるのでした。
音無がなぜそこまで奏に思い入れるのかずっとわかりませんでした。
7話で音無の(多分にもれず強い悔いの残る)生前の記憶が戻るまでは。
奏に楽しい思いをさせたいと思ったんだろうね。自分の妹の代わりに。
全く記憶はなかったのに生前に思い残したことをしようとしてたとは。
奏が可哀想に見えるのもこの作品が音無の視点で語られてるからです。
実のところ隠されてる音無の記憶が物語の重要な鍵だと思ってました。
思ってたほどではないけど、確かに一つの重要な要素ではあるかなと。
たぶんこの後、奏を守るのが音無にとって重要な目的になるだろうから。
にしても、この物語はいったいどう終わらせるつもりなのでしょう?
今までのkey+京アニの作品よりずっと先が気になるぞ。
※この作品のアニメ制作はtrue tearsとCANAANのP.A.WORKS