BS11とAT-X(8月~)でも放送してるので地上波で見れない人はそちらで。
原作はライトノベル?(講談社BOX)で読んだことはありません。
※セル・レンタルDVDのリリースは9/30から
阿良々木暦(あららぎこよみ)はある日、戦場ヶ原ひたぎの秘密を知った。
階段を踏み外し落ちてきた彼女を受け止めた時にそれに気付いたのだ。
彼女は想像してたより軽かった、ではなくまるで重さを感じなかった。
暦はその奇妙な事実が気になってひたぎに関することを調べようとした。
そんな暦の前に戦場ヶ原ひたぎは鋭い凶器と激しい敵意を携えて現われる。
これ以上立ち入るな、これはお願いじゃない、と彼女は凶器を突き立てる。
その場逃れで暦はひたぎの要求を了承し、彼女はその場から去っていった。
暦はすぐにひたぎを追いかける。彼女の要求を聞く気など無かったのだ。
追いかけてきた暦に気付いたひたぎは「なら戦いましょう!」と口にする。
今にも襲い掛からんとするひたぎに暦は主張する、戦いたいんじゃないと。
役に立てるかもしれないと。とにかくこれを見てくれ、と唇を大きく開く。
その瞬間、ひたぎの手から凶器が滑り落ち、全身から噴出す敵意は消えた。
そこにある筈の先刻ひたぎ自身がつけたホッチキスの傷が無かったから。
そう、阿良々木暦にはひたぎの奇妙な事実を信じるに足る経験が有って、
それを解決に導くことが出来るかもしれない人物に心当たりがあったのだ。
最初に思ったのが、西尾維新という人はこんな話を書くんだ、だったかな。
実は名前だけはずいぶん前から知っていた、と言うか気になってたのです。
店頭で目立つように並んでたし、人間らしからぬペンネームだったし。
(ライトノベルには日日日なんて妖怪みたいな名前の人もいるが)
常に時間に追われてるような現状でなければ読んでみたいなと思ってた。
だからアニメを見てなるほどこんな話を書くのかと実感したわけです。
ちなみにアニメを見た後に原作本を見てみようと店頭で探してみたら、
どこにも有りませんでした……売れまくりで丁度品切れてたらしい。
※8/28付けの公式ブログに重版できたと書いてある
まずは、この作品について簡単に説明を。
一言で説明すると怪異にまつわる物語です。タイトルにあるとおり。
それも古文書や伝奇に記述されてるような知る人ぞ知る怪異に関わる物語。
オカルト系の作品としては昔から何作も書かれてきたよくある体裁です。
最近の作品だと百鬼夜行抄と方向性が近いと言えないこともないかも。
まぁ、見た目も雰囲気も内容も全く似ても似つきませんが。
名前の中に隠された意味を紐解いていくとこなんかはそっくりっすね。
確か「猿の手」のエピソードは百鬼夜行抄にも出てきた記憶がある。
そんな内容を現代的なキャラを使い言葉遊びを散りばめて書いてます。
萌えやらツンデレやら今ならではのキーワードも随所に入ってるし。
主人公以外は美少女ばかりなハーレム風の構図なのも現代的っすね。
この作品の最大の特徴は会話でしょうか。
この作品ってストーリーを説明するとかなり単純だったりするのです。
ぶっちゃけるとストーリーだけなら半分の尺でも十分収まると思うよ。
そこにキャラのやり取りのセリフを散りばめて倍の尺にしてあります。
ストーリーだけなら半分の尺に収まるようなとても間延びした内容。
ではなくストーリー上は無駄に見える会話こそが作品の本質なわけで。
ストーリーに詰め込むのではなく言葉で畳み掛けるのが本質なのです。
妙に意味深だったり人を食ってたり歪んでたりするのが本質なのです。
このテキストセンスこそが西尾維新らしさではないかと思うのです。
(他の作品のことは知りませんが)
この作品がノベルを原作にしてるのを嫌というほど実感させるのです。
もちろんこの作品のノベルらしさ西尾維新らしさが表現されたのには
新房さんと愉快な仲間たちの尽力があったのは言うまでもありません。
会話の内容と映像をさり気にリンクしてみたり構図を変えてみたりと、
動きの無いシーンで映像の緩急をつけることでテンポを良くしてるし。
新房アニメお得意のハッタリが作品の雰囲気作りに絶妙に効いている。
忍野メメの胡散臭くて危なそうなキャラがとってもカッコイイよ!
蟹も透明で文字が蠢くあの姿の方が得体の知れない不気味さがあるし。
原作者曰く映像化に向いてない作品を見事なまでに映像化したのです。
(西尾維新さんは新房×シャフトなら期待できると思ったそうな)
「まりあ†ほりっく」の時も思ったけど、言葉を散りばめる面白さを
表現すると言う意味でも、新房さんは他に一線を画してる感じすね。
ちなみにこの作品の魅力である会話を存分に堪能してもらうために
当初予定してた5エピソードを全12話から全15話に増やしたそうです。
今回見たのだと「まよいマイマイ」が2話から3話になったらしい。
ストーリーだけなら2話でも収まるけど確かに魅力が殺がれそうだ。
放送枠は12話(スペシャル特番を含めて13話)までしか無いらしいので
残りは公式サイトかなんかでネット配信するとかなんとか。
AT-Xでそのまま15話分放送してくれれば録画が楽でいいのだけど。
もう一つの特徴はこの作品の肝とも言える物語の仕掛けすね。
上に書いてあるようにストーリー自体は実にシンプルなのです。
シンプルなストーリーだけどあっと驚く仕掛けが入れてあります。
そこまで見えていたことは実は事実の一端に過ぎなかった、みたいな。
振り返ってみると全て見えてるのに、その可能性を失念してるみたいな。
特に「まよいマイマイ」はまさに一本とられた!という気分だったです。
ちゃんと説明してくれるので1回目でも仕掛けの面白さは理解できるけど、
仕掛けを知った上で改めて見返すと緻密な組み上げっぷりに驚くのです。
ただキャラの性格づけとノリを表現してるだけに見えるセリフの数々が
ちゃんと物語の仕掛けと繋がってると知って目から鱗が落ちるのです。
「私の肉体は案外法を犯してまで手に入れる価値は無いかも~」が
まさかあんなところに繋がっているとは……
そして物語のケリのつけかたがこの作品の最大の魅力かなと。
物語の仕掛けや会話もこの作品の魅力の要素には違いはないけど、
この作品をより印象的にしてるのは実はケリのつけかたなのでした。
どんな状況に陥ろうと必ず救いのある結末を選択するところなのです。
ただ物語を終わらせるのではなく、ただ選択肢の一つを選ぶのでもなく、
そんな選択肢はないとしてもそれでも最も幸せな結末を模索するのです。
物語は単純で仕掛けでアッと言わせるショートショートみたいな作品で、
でも必ずエピソードの根幹には人の心が有って伝わるものがあるのです。
「するがモンキー」なんか解決するための選択肢は最悪な2択だけなのに、
そこで暦が選んだ選択がとんでもないし、あの結末はもっと予想外だった。
あの状況から全てを引っくり返す結末に導ける豪腕っぷりには驚いたよ。
作品の体裁としては全15話の連続したストーリー物ではなく、
5つのエピソードか時間的に連なってるオムニバスなシリーズ物です。
1~2話が「ひたぎクラブ」で、3~5話が「まよいマイマイ」で、
6~8話が「するがモンキー」です。
一部地域を除いて5話と6話の間に特番が入ってました。
※「ひたぎクラブ」「まよいマイマイ」を振り返る総集編
それぞれのエピソードでは怪異に関わるそれぞれのヒロインが登場して
そのキャラと主人公の暦が絡むといういわゆる当番回構成になってます。
事前にそう聞いてたのでそれぞれ別のキャラの話をやると思ってました。
でも、そうではなくて、あくまでもそのキャラに光が当たるだけで
メインヒロインである戦場ヶ原ひたぎが全ての話に絡んでくるのでした。
ただいるだけではなくて全てのエピソードの根幹に関わってくるのです。
それぞれの話に平行して暦とひたぎのラブストーリーも描かれてるしね。
エピソード単体ではなく作品として思い入れられるようになってるのです。
ちなみに八九寺真宵も自身の話以外では出る必然性が無いのに出てくるよ。
駿河もこの後のエピソードに出てくるっぽいね。
これも作品の体裁の一つですがエピソード毎に別のOP映像と主題歌が。
それぞれのエピソードのヒロインの人が(自身を?)歌ってるのでした。
それぞれのヒロインに相応しいインパクトのある映像をバックにして。
新房アニメなので主題歌や映像が複数有って当然って気もするけれど。
このオープニング映像がいつものごとく凄いです。
尾石さんのひたぎのはホッチキスが画面を走り回るポップアートだし。
板垣伸さんの真宵のはキャラが飛び回る新房アニメらしからぬノリだし。
(小麦ちゃんとか姫様ご用心とかに近いテイスト)
鈴木利正さんの駿河のは薄い色彩の透明感を感じさせるキレイな映像で。
相変わらずアニメ業界の孤高を突っ走ってるという印象がしました。
もちろん本編の映像も他を圧倒する独創的な表現のオンパレードですよ。
いつものごとく。
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