原作はこんなにメリハリのある作品じゃなかったのに。
最終回に感動して泣いちゃいました、とかなんの冗談かと思ってたのに。
自分で見てみたら思いのほか感動的で涙が……(汗)
やっぱり自分の目で確かめてみないとわからないなと改めて実感したり。
そして原作の内容でアニメの面白さは決定されないのだとも改めて実感した。
ぶっちゃけそれなりの原作が構成・脚本次第でここまで面白くなるとはね。
原作はさほどメリハリがないのにアニメで見たら全く印象が違ってて、
要所で感動的に盛り上がって最後にはドーンと感動的に終わってる。
そんなけいおん!と同じ気分を過去に味わったのがRECという作品です。
けいおん!と同じTBSとポニーキャニオンが製作した2時間ほどの作品で。
※アニメ制作は新房アニメでお馴染みのシャフト
そのRECのシリーズ構成がこれと同じく吉田玲子さんだったのでした。
つまりこのメリハリのつけ方は吉田玲子さんの芸風なのかもしれない。
全体の流れをイベントに着目して構成するのも吉田玲子さんの手法かも。
2クールで心情の変化を丁寧に描くと間延びした感じになりがちなのに
Canvas2ではイベントを絡めることでメリハリと密度を保っていたから。
(心情の変化だけのキミキスのアニメは水で薄めたアメリカンだし)
あくまで吉田玲子さんはシリーズ構成で脚本全部をやってはいないのに
こんなに変わるのか?ってぐらい作品の出来を左右することが多いよ。
ちなみに吉田玲子さんは私が最も信用してる脚本家の一人です。
(監督や作品との相性は有るけどね)
イベント仕立ての構成というと、まさにこの作品がそうなのでした。
最初の方の唯が初めてのことを一つ一つクリアしていくのがまさにそれ。
そのへんはわりと原作通りなので構成の手腕はあまりわからないけど、
今回見た中盤以降の内容では原作とはかなり構成が変えてあるのでした。
どこが違うかと言うとまさにイベント仕立てなところが違うのです。
このへんの原作には何もないだらだらぐだぐたした回が結構有るので。
アニメでそのへんどうすんのかと思ったらバッサリ切り捨ててきました。
全体の面白さが安定してるのは間延びした内容を切ったからなのです。
話を膨らませてるところより切り捨てたことの方がむしろ感心したよ。
原作の内容を目いっぱい膨らませたと思ったらあっさり流したりもして
1話で1つのテーマ(イベント)を描くようにキレイにまとめてあるし。
ぶっちゃけそれなりの原作(以下略)
漠然とした話ばかりではなんなので具体的な話をいくつか。
9話の「新入部員!」のこと。
この回は原作を3回分も使ってるのでそのままでも1話が成り立ちます。
内容的にも細部を膨らませてる以外はほとんどそのままみたいなもんです。
でも原作と見比べるとビックリするぐらいに大きな違いが有るのです。
それは梓が期待してたのと違って失望していく内面を掘り下げてるとこ。
軽音部をやめようと実際に行動にするとこはアニメにしかないんだよ。
最後に梓が感情を吐き出してわーっと泣き出すのも原作には無いんだよ!
原作だとここわりとゆるゆるなぁなぁでうやむやに終わってるのです。
(原作がなぁなぁうやむやなのはここに限ったことじゃないが)
それを知ってたから感動的ないい話になってるアニメにはビックリだよ。
そーいや、あずにゃん(梓)って最初キャラ紹介にいなかったっすね。
オープニングも唯・澪・律・紬の4人だけで完成した感じになってるし。
最初はあずにゃんの出るあたりまで進まないのかなと思ってました。
サプライズのシークレットキャラとして意図的に隠してたみたいっすね。
まぁ、原作を知ってたから進み具合でそろそろ出るのはわかりましたが。
毎週見てて(見てたんです)「クリスマス!」の時に次の次のあたり?と。
そう思った次の週(新歓!)にもう出てきたのは少し驚いたけど。
そこがまさに原作のあまり内容のない回をすっ飛ばした部分なので。
てっきりそこの内容を新歓の準備の部分に混ぜるんだと思ってたのに。
あと、あずにゃんって原作では新歓!には全く絡んでこないのです。
※新歓!の回の最後にちょろっと出てくるだけ
あずにゃんが初登場の8話「新歓!」
この回は原作の2回分の内容を使ってて最後に梓が出てきます。原作では。
つまり原作とアニメはかなり内容が違ってると言うことです。
大筋の構成はそう大きく違うわけではないんですが。梓のとこ以外は。
でも梓の視点を交えて構成したことで原作とはずいぶん違う感じに。
興味があったけどあと一歩が踏み出せなくて、新歓!で聞いて感動して、
みたいなシチュエーションは原作にはないアニメでの描写なのでした。
演奏に惚れこんだというセリフをより実感できるように変えたのです。
9話もそうだけど皮膚感覚というのを凄く考えて映像にしてるなと。
惚れこんだのがわかるからこそ失望したのも痛いほどわかるわけで。
キャラを生っぽく描いてるのも皮膚感覚を大事にしてる所以ですね。
原作とそう違わないけど微妙なさじ加減が絶妙に効いているのです。
微妙なさじ加減と言えば10話の「また合宿!」
この回は原作の2回分の内容を使ってて、と言っても大半は1回分で。
合宿の回とあずにゃんと憂が会ってる回が原作だとそれぞれ1回分です。
※原作だとあずにゃんと憂が会うのは合宿後の1回だけ
この回の内容の違いの大半は自分で見比べてね(はーと)とか言ったり。
アニメで見てて凄く印象に残ったのが唯が夜に一人で練習してたとこ。
それを見て梓が唯のことを見直すという凄く重要なシチュエーション。
実はこのシーン原作には影も形もありません。似たシーンも含めて。
梓がみんなを好きになっていくのをちゃんと見せたのは上手かったなと。
梓って一時は失望してやめようとすら思ってたのに、最後の学園祭では
唯が出れないなら出場する意味ないとすら言うほど入れ込んでたわけで。
原作にはないその間の心境の変化をしっかり補完したというわけです。
あと内容とは全く関係ないことだけど。
お風呂のシーンでさわちゃん先生が澪と梓を襲おうとして殴られるとこ。
火花が散る表現にさわちゃん先生がポーズとってる絵が挿入されてる。
これってうる星の時代にはよくあったアニメーターのお遊び表現だけど、
まさか20年の時を経て今さら新作で見るとは思わなかったよ……
ちなみに原作だと澪の胸を後ろからがばっと掴んでたりします(爆)。
原作と違うと言えばやっぱりクライマックスの2話。
11話の「ピンチ!」と12話の「軽音!」ですね。
アニメでは2回続きのピンチの連続でスペクタクルな展開なんだけど
原作だと学園祭前に唯が風邪をひくシチュエーションしかないのでした。
弦が錆びちゃうのもあるけど単発の内容で学園祭とは関係ないのですよ。
それらを組み合わせて、さらに新たなピンチをいろいろと追加して、
学園祭のステージというクライマックスに向けた大きな流れにしてある。
見てる側も最後に上手く行って良かったとと思えるようにしてある。
大変だったからこそみんなで演奏できたのが素晴らしく感じるのです。
正直、ここまでカタルシスを感じるラストが有るとは思ってなかったよ。
2度目の学園祭あたりがキリがよいかなぐらいの印象だったのに。
11話のもう少し詳細な違い。
この回は原作の1回と半分と+αを使ってます。
唯が弦を交換しに行く1回とバンド名を決めるために話し合う半分。
つまりはそれ以外の要素はほぼアニメで追加された部分なわけです。
体育館使用届を(毎度)出し忘れてるのは原作通りだけど、
律が風邪をひいて締め切りに間に合わないのは原作にはないです。
律が澪と和の仲の良さに嫉妬して関係が気まずくなるのもありません。
そもそも原作には関係が壊れかけたりするような展開がありません。
だからゆるゆるぐだぐだなんだってば。内容だけでなく人間関係も。
関係の壊れかける危機を乗り越えたからこそより強い絆を感じるわけで。
仲の良さを表現するために敢えてこの内容を入れたことに感心した。
萌え系ってキレイゴトでこのへん無かったことにする作品が多いのに。
もう一つ凄く印象に残ったのがバンド名が決まって記念撮影するシーン。
そういえば1話のメンバーの4人が揃ったところでも記念撮影してたなと。
確かに節目のポイントで写真をととるのはそれっぽいかもと思ったよ。
実は原作だとどちらのシチュエーションでも写真を撮らないのです。
ここなんかまさにちょっとのさじ加減で生っぽさが断然違う部分すね。
12話の違い。この回は原作の2回と半分を使ってます。
この回は衣装を決める部分の構成が多少違う以外はわりと原作通りです。
11話の展開で唯の風邪は律からうつったのかと思ったけど原作通りでした。
なんだ原作とそんなに変わらない内容じゃないかと思って見てました。
クライマックスのライブが始まるまでは……
そしてクライマックスのライブ。ここは原作とはもう全く違うのでした。
どこそこが違うとかいうレベルではなく原作とは全く別のものなのです。
てゆーか原作だとここのライブのシーンは1コマしかねー!
ちなみに原作でも唯はギターを忘れるけど憂が後から持ってくるので、
家に取りに戻って走るみたいなえらく盛り上がったシーンは無いです。
1話の冒頭のシーンに重ねて今までを思い返す内容も(当然)ありません。
原作だとライブの1コマとその後のゆるいシーンで終わるのです。
感動とかカタルシスとかそんなものとは全く無縁の結末なのです。
そもそも原作はここにキッチリした節目があるわけじゃないからね。
(節目とかメリハリみたいのは全編通してほとんど無いですが)
そんな原作を知ってたから見てて「なんだこれ!」な印象だったわけで。
1話目からみょーに面白いと思って見てたけど予想以上に化けたなと。
ぶっちゃけそれなりの原作(もういいって)
そーいや、12話冒頭のムギのたくあん眉毛のネタ。
あれコミックス(1巻)のカバー下にある書き下ろしマンガなんだけど、
アニメで使われるとは思いもしなかったよ……
キャラ描写がリアル志向のこの作品では使いよう無いだろうと思って。
まさか熱にうなされた唯の夢として使ってくるとは!
あと残りの回の原作との違いや簡単な感想を。
6話「学園祭!」
この回は原作の1回分を怒涛のように膨らませてあります。
大筋はそのまま学園祭の光景や練習などの描写を大幅に追加してあります。
澪が練習をしようと誘ってる部分や練習してるシーンは原作にはないので。
(練習自体は描写されて無いだけで原作でもやってると思いますが)
そしてこの回で最も印象的だったのはやっぱりライブそのものですね。
原作にも歌詞はあるけどどんな曲かは脳内で想像するしかなかったので。
実際に曲で聞けて楽しかったり、予想よりカッコいい曲で驚いたりした。
だって「ふわふわ時間」って甘々な歌詞だしもっとカワイイ曲なのかと。
こんな感じでカッコイイ曲調もいかにもバンドっぽくていいっすね。
曲が流れてた時のアメリカの青春映画みたいな映像にもウケたよ。
7話「クリスマス!」
この回は原作の2回分を使ってます。クリスマスの回と初詣の回を。
という説明で原作を知らない人だとアレ?と思うかもしれない。
だってアニメはクリスマスの内容が大半で初詣って少しだけだったから。
まさにそのそれぞれの尺の差が原作の膨らませかたの差なわけでした。
クリスマスは大幅に膨らませてあって初詣は原作ほぼそのままなので。
ちなみに唯と憂の小さい頃の話は全部がアニメでの書き下ろしです。
あの唯が綿で雪を表現したカワイイというか微笑ましいエピソードが。
てゆーか唯の小さい姿って全話通じてほぼアニメで追加した分ですよ。
憂(他)が芸を見せるシーンや唯と憂が欲しいものを送りあうのも追加分。
唯と憂の姉妹仲がいいのは原作でも随所でそれとなく描いてたけど、
ここまではっきりしたエピソードで描いてきたのにはちょっと驚いた。
番外編「冬の日!」
12話が最終回で13話が番外編ってなんでやねん!って感じでしょうか。
でも実際に見るとこれが番外編なのはわかりすぎるぐらいよくわかる。
イベント仕立ての本編の構成では何も起きないこの回は入れられないし。
それでもやっぱりイベントではない日常をやりたくてやったのかなと。
あまりにまったりした内容にハルヒ1期の時系列最終話を思い出したよ。
ちなみにこの回は原作の内容こそ使ってるけど実質オリジナルです。
オリジナルの話に原作のネタを挿入したスケッチブック体裁です。
いつもは一緒につるんでるみんながそれぞれ別々に行動するんだけど、
一人になることで一緒が楽しいのを実感するという展開なのが面白いね。
これも11話同様原作ではやらない側面を掘り下げて仲を表現したわけで。
全体の構成からは外れるけどやりたかった、ってのがわかる気がする。
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